鵜匠isアーティスト!? 長良川鵜飼いとカタライの秘密

アラフォー編集者が行くグルメシ！地方の旅。刃物の町・関市の次に訪れたのは1300年の歴史を誇る岐阜市長良川の“鵜飼い”！まさか伝統の鵜飼いから人間関係についての真理を学ぶことになるとは……！？

美濃国（岐阜）で鵜飼いが始まったのは西暦７００年ごろとされています。正倉院宝物におさめられた当時の戸籍に「鵜養部目都良売（うかいべのめづらめ）」という人物の表記があり、鵜飼いを生業としていたと想定。1300年の歴史の理由とされています。

そもそも日本での鵜飼いの発祥は中国から伝来した説や、中国日本それぞれ独自に発生したという説があり、詳細は定かではなのですが、鵜飼いを表現しているとみられる埴輪が出土したりしていることから、古墳時代にはもうその文化は日本に存在したと考えられているとのこと。そう考えると本当に歴史のある伝統的な文化なんですね！

ぎふ長良川鵜飼いは5月11日～10月15日まで、中秋の名月と増水時以外、毎日行われます。朝起きると川の様子を確認。昼間は鵜の世話などしながら、体を休めることに重点を置き、午後4時くらいにその日の川の状況を判断。どの漁場に行くかなど決め、その日、漁に連れて行かない居残りの鵜たちに餌をあげ、籠に入れて休ませます。その間に、鵜船の船頭さんがその日に使う道具などを船に乗せてくれ、午後6時に出発地点となる上流に集合。かがり火の明かりと合図の花火とともに鵜飼いが始まるということです。

６艘の鵜舟が順々に川を下っていき、最後は６艘が並んでの「総がらみ」！月明りだけの暗闇の中、６つのかがり火とともに並ぶ鵜舟の姿は、神々しさすら感じました！

世襲制でしかも男性しか跡を継ぐことが出来ない長良川の鵜匠。取材をさせていただいた鵜匠さんの家は男児が一人だったこともあり、自分が継ぐしかない状況だったといいます。
そんな鵜匠さんにお父様は「大学までは好きなことをやらせてやりたい」と言ってくれていたとのこと。でも、そんなさなかにお父様が他界され……

「小さいころから家の仕事として見ているので継ぐのは自然だった。でも最初はなかなかうまくいかなくて。「こいつ、新参者だな」と鵜がなかなか触らせてくれなかった（笑）」

鵜が慣れるには時間をかけるしかなく、鵜匠さんも最初は苦労されたそうです。でも次第に鵜とも心が通っていき、仕事も楽しくなってきたとか。

「触り方ひとつ、鵜ごとに全然違う。一回だけ名人に質問したことあるが「こうやってやるだけだよ～」と言われよくわからず、結局見て覚えた。自分流を見つけていく。伝統もそれぞれの自己流で繋いでいく。だから、我々が変なことやると次の世代に悪い影響が出てしまう。自分を律して見せていくことは心掛けている。それが伝統を守るということ」

そんな鵜匠さん、鵜匠の修行をしながら大学にも通い、やりたかった会計学もちゃんと修了されたとか。文武両道ならぬ、文鵜両道！？「すごい！」のひとことです！

ところで、皆さんは「カタライ」という言葉、ご存じですか？
自然界から連れてこられた鵜は、最初、環境に慣れるため、ペアで育てられるそうで、そのペアのことをカタライと言うんです。同じ籠の中で育つことで、絆が生まれ、環境にも早くなれることができるとか。とは言え、鵜にもそれぞれ性格があるもの。時にはイライラしてケンカになることも。

「夫婦喧嘩みたいなもんだね。でも小屋に放すとだいたい二羽寄り添っている（笑）」

ケンカしながら絆を強くしていく。まさに、人間関係も同じ。男女関係なく共に時間を過ごし、ちゃんとわかり合うことが生き物にとって大切。たしかに、孤独じゃないと思えるだけで、人って強くなれますもんね。私も早くカタライを見つけたい……！

そんな鵜は平均でも２０年、長ければ３０年仕事をすることもあるそうで、老いて漁に出られなくなった鵜も最後まで面倒を見るのが鵜匠の役割だ、と鵜匠さんは優しい目で仰いました。鵜と鵜匠さんの絆も本当に素敵です！

古くは織田信長が、そして松尾芭蕉やチャップリンが愛した長良川の鵜飼い。（世界の喜劇王・チャーリー・チャップリンは４回の来日のうち、２回鵜飼いを観覧。鵜匠はアーティストだ！と感激し、観覧船で食べた天ぷらも大好物になったとか）伝統とともに生きる鵜匠さんに、伝統を守るための極意を最後に伺いました。

「道具や人が時代の変遷とともに失われていくのを、保持すること。技術も下がらないよう、維持できるよう努力する。ほかっておけばなくなっていくものを、いろんなところで少しずつ手当てをすることが大切だね」
（編集K）

※グルメシ！in岐阜は12月まで不定期連載します。